働き方改革以降の残業時間推移と二極化する労働実態

2019年の働き方改革関連法の順次施行により、日本国内の労働時間管理は大きな転換点を迎えた。時間外労働の上限規制と罰則の導入で、長時間労働是正の動きは確実に加速している。大手企業を中心に勤怠管理や業務見直しが急速に進み、平均残業時間の減少傾向が見られるようになったことは、社会的な成果と言える。しかし、全体的な傾向の裏側で、企業規模や業種による格差が拡大しているという現実に目を向ける必要がある。

豊富なリソースを持つ大企業が改善に成功する一方、慢性的な人手不足の中小企業では長時間労働が解消されていないケースが目立つのが偽らざる現状である。また、数字上の残業削減が目的化し、業務量はそのままで退社を強要される「時短ハラスメント」といった新たな問題も浮上している。結果として、仕事を家に持ち帰って処理する隠れ残業や早朝出勤が増加し、実質的な負荷が変わらないどころか、精神的な圧迫感が増している労働者も少なくない。

テレワークの普及も相まって、オンとオフの境界線が曖昧になり、常時の即応を求められる状況も見えない拘束時間を長引かせる要因となっている。法整備で表面的な労働時間は抑制されつつあるが、現場の負担軽減が追いついていない歪みが、特定の層に集中しているのが実態である。社会全体で働き方は変わりつつあるが、恩恵を享受できている層と、しわ寄せを受けている層との二極化は、今後さらに深刻な課題となっていくことが予想される。