いわゆる「サービス残業」は、労働基準法に明確に違反する行為であり、対価の支払われない労働は決して許容されるものではない。企業側が「自己研鑽」や「暗黙の了解」といった言葉を用いて正当化しようとしても、使用者の指揮命令下に置かれている時間はすべて労働時間とみなされるのが法的な原則である。タイムカードを退勤扱いにした後の業務継続や、持ち帰り仕事が常態化している場合、それは明白な賃金不払いが発生している状態と言える。
この不当な扱いに立ち向かうために最も重要となるのが、客観的な証拠の確保である。会社側が管理している勤怠データが実態と乖離している場合、労働者側で独自の記録を残しておく必要がある。業務で使用したメールの送信履歴、パソコンのログイン・ログオフの記録、交通系ICカードの乗降履歴などは、実際の労働時間を証明する強力な材料となり得る。また、具体的な業務内容と開始・終了時間を詳細に記した手書きの日記であっても、継続性があれば信用性の高い証拠として採用されるケースは多い。
未払い残業代の請求権には時効が存在するが、法改正によりその期間は当面の間3年に延長されている。泣き寝入りをして自身の権利を放棄するのではなく、冷静に事実関係を整理し、証拠を積み重ねておくことが将来的なリスク管理に繋がる。感情的な対立を避けつつ、法的な根拠に基づいて正当な対価を求めることは、労働者として当然行使すべき権利である。不透明な労務管理には、事実と法律を持って対抗する姿勢が不可欠となる。